社内のAI推進者を育てるには、部門で受ける相談、共有する内容、判断を引き継ぐ相手、活動に使う時間を先に決めます。実際の業務を題材に、試す・説明する・相談を取り次ぐ経験を積み、上司や事務局と振り返る形にします。

この記事では、部門の相談・共有・改善を支える推進者を扱います。エージェントの開発や本番運用を担う技術者の育成とは、役割と到達点を分けて考えます。

業務を知り、周囲と学べる人を候補にする

候補者を考えるときは、AIの操作経験に加えて、部門の仕事を理解しているか、困りごとを聞けるか、試したことを同僚へ説明できるかを見ます。本人の関心と、上司が活動を支えられるかも確認してください。

MicrosoftのChampionガイドは、好奇心、同僚からの信頼、試して共有する姿勢などを挙げています。また、担当する活動と担当外の業務、活動時間、相談先を役割書にまとめることを提案しています。Copilot導入の実践ガイドであり、全企業共通の必須制度や標準工数ではありません。MicrosoftのChampion役割ガイド(2026年10月17日確認)

育成前の面談では、最近困った業務、周囲へ説明した経験、相談を受けたときの対応を聞きます。すべてを答えられる人を探すのではなく、分からないことを整理して適切な人へ相談できるかも確認します。

任命前に、活動時間と判断の範囲を合意する

推進者の活動には、試行、相談対応、共有、記録の時間が必要です。兼務の場合は、どの業務を調整して時間を確保するかを上司と決めます。相談が増えたときに担当範囲や人数を見直す相手も明確にします。

NTTPC自身の記録では、部署の推進担当者が現場の課題を集め、共有会やコミュニティ、個別相談につないでいます。研修や環境整備も併用した自社事例で、各部署に技術に詳しい社員がいた背景があります。推進者制度だけの効果や、他社でも同じ結果が出ることを示すものではありません。NTTPCの全社DX記録(2026年3月25日公開・4月21日更新)

任命時には、支援する部門、受ける相談、活動時間、上司・事務局の担当、見直す時期を短い文書にします。情報の利用可否、アクセス権の変更、本番で使うかどうかの承認は、それぞれの責任者につなぐ前提です。

役割表で、実施する人と判断する人を分ける

以下は、推進者の仕事を自社で決めるための設計案です。組織によって兼任していても、どの立場で判断するかを区別して使います。

表は横にスクロールして確認できます。

部門AI推進者の役割表:実施・判断・記録の分担
活動推進者が行うこと判断・支援する人残す記録
課題を集める仕事の手順、つまずき、活用案を聞く部門責任者が優先順位を決める課題、対象業務、未解決事項
小さく試す承認された環境・資料で試す業務責任者が範囲と完成条件を確認する入力、手順、出力、確認結果
相談を受ける操作や手順を案内し、担当外は取り次ぐ権限・接続は情シス、業務判断は責任者が担う相談内容、引継ぎ先、解決状況
使い方を共有する再利用できる例をまとめ、説明する業務・資料の管理者が共有範囲を確認する適用条件、使わない条件、更新日
改善を振り返る手間、品質、困りごとを集める部門責任者・事務局が継続や変更を判断する変化、残る負担、次の対応
担当を引き継ぐ未解決相談、教材、連絡先をまとめる上司が後任と活動時間を決める保存場所、担当、相談の経緯

推進者に相談が集まることと、その人がすべてを承認できることは別です。相談を受けた後は、相手へ渡す情報と次の確認日を記録し、担当が不明なまま放置されないようにします。

AI実行基盤の責任分担シートをダウンロード(CSV)

環境運用側の分担を整理する雛形です。権限・接続などの相談を引き継ぐ担当を確認するときに使えます。推進者の育成や活動の設計には、上の役割表を使ってください。

実際の相談を題材に、試す・説明する・取り次ぐ

育成では、対象業務を一つ選び、推進者が自分で試した後、同僚へ説明してもらいます。説明を聞いた人が手順を再現できるか、質問されたときに何を確認するかを、事務局や業務責任者と振り返ります。

たとえば「問い合わせ回答の下書きにAIを使いたい」という仮想の相談を題材にします。推進者は、使える資料、回答の完成条件、確認者を聞き取り、試行内容を整理します。資料の利用可否が不明なら管理者へ、必要な機能を使えなければ情シスへつなぎます。回答の正しさと実務で使う判断は業務責任者が確認します。

その経験から、再利用できる手順と、判断に迷った点を残します。研修で知識を得ることに加え、相談を整理して支援先へ渡す練習も組み込む設計です。

活動件数と、改善・負担を分けて振り返る

相談件数や共有会の回数だけでは、部門の仕事が進んだかは分かりません。未解決相談が適切な相手へ渡ったか、共有した手順を他の社員が使えたか、確認や修正の負担が増えていないかを見ます。

上司との振り返りでは、確保した時間で活動できているかも確認します。件数が増えた理由が利用の広がりなのか、同じ不具合が解消していないためなのかで、次の対応は変わります。

異動や担当交代に備え、資料の保存場所、最新版の教材、未解決事項、相談先、次の見直し予定を残します。後任が同じ相談を最初から調べ直さずに済むかを、引き継ぎ時に確認してください。

役割と育成を、自社の体制に合わせて相談する

AI推進者育成・内製化支援を検討する際は、候補者、支援する部門、現在の相談先、確保できる時間をお伝えください。業務への適用も一緒に進めたい場合は、AI活用の定着・改善支援の範囲も確認できます。

支援の進め方、支援者の背景もご覧ください。全社員向けの教育を設計する場合はAI研修の依頼内容の決め方、部門をまたいで広げる場合はAI活用を部門へ展開する進め方に整理しています。