企業のAI研修は、誰が、受講後にどの仕事を、どこまで自力で進められるようになるかから設計します。職種と現在の習熟度を確かめ、その到達点を試せる演習、利用環境、出力の確認方法を決めてから、研修会社の提案を比較します。

この記事は、研修を発注する前の人材育成・DX担当者、部門長向けです。対象人数や講義時間に加え、依頼先に伝える条件と、自社で準備することを整理します。

受講後にできる仕事を、確認できる形で決める

「AIを使える人を増やす」だけでは、研修の内容を選びにくくなります。たとえば営業担当なら、製品資料を使って問い合わせ回答の下書きを作り、資料に戻って誤りや不足を確認するところまでを到達点にできます。これは研修設計を考えるための仮想例です。

AIが文章を生成した時点で演習を終えず、受講者が確認・修正できるかまで見ます。対象業務の完成条件は業務責任者と決め、その条件を講師へ共有してください。

NRIの「IT活用実態調査2025」では、生成AI活用の課題として技能不足やリスク管理の難しさが挙げられています。国内売上高上位企業を対象とするCIO等の調査であり、個人の能力や研修効果を測った結果ではありません。NRIの調査概要と結果(2025年11月25日)

職種と習熟度を別々に確認する

同じ営業部門でも、初めて使う人、下書きを作れる人、出力を修正して業務に使っている人では、必要な練習が異なります。一方、使う頻度が高くても、事実確認や情報の扱いを十分に理解しているとは限りません。

事前に、担当業務と利用経験を聞き、可能なら短い課題で操作・指示の修正・出力確認のどこまでできるかを確かめます。その結果から、共通で学ぶ内容と、職種や習熟度に合わせて分ける演習を決めます。

KDLが掲載するミズノの事例では、経験者には基礎講義が冗長だったという声を受け、レベル別教育も検討されています。支援会社掲載の顧客の声で、公表日は本文に記載されていません。すべての企業で同じクラス分けが有効だと示す資料ではありません。KDL掲載のミズノ研修事例

実務題材と、実習できる環境をそろえる

演習題材には、入力する資料、作業の目的、成果物に必要な項目、確認方法を添えます。自社の資料を使えるか、加工が必要か、代替教材を使うかも事前に決めます。教材を作る担当と内容を確認する担当を分けておくと、準備の抜けを確認できます。

Microsoftの職種別Copilot教材は、役割に沿う演習とともに、アプリの利用経験、アクセス、ライセンスや管理設定などの前提を示しています。Microsoft製品向けの教材設計例で、特定の研修方式の効果を保証するものではありません。Microsoft Learnの職種別教材と前提条件(2026年10月17日確認)

契約済みでも、受講者全員が演習に必要な機能を使えるとは限りません。実際に使うアカウントと端末で、資料を開き、演習を進められるか確認します。難しい場合の代替演習も、研修会社と決めておきます。

依頼仕様表で、自社の準備と講師への依頼を分ける

以下は研修発注前に使う設計案です。自社の業務に合わせて埋め、各社へ同じ条件を渡すことで提案を比較できます。

表は横にスクロールして確認できます。

AI研修の依頼仕様表:自社で決めることと依頼先への確認
項目自社で整理すること研修会社へ確かめること自社の確認者
対象者職種、担当業務、人数共通講義と職種別演習の分け方研修担当・部門長
習熟度操作、指示の修正、出力確認の経験事前課題と受講者への対応方法研修担当・受講者
到達点自力で進めたい作業と判断演習で確認する項目と合格の条件業務責任者
演習題材入力資料、手順、成果物の完成条件自社教材の作成範囲と代替教材現場担当・資料管理者
利用環境契約、機能、権限、端末事前動作確認と使えない場合の対応情報システム担当
出力確認誤り・不足の確認方法講師のレビューとフィードバック業務の確認者
実施条件受講に使える時間、拠点、参加形式欠席、質問、教材の再利用への対応部門長・研修担当
受講後実務で試す課題、担当者、振り返る時期残る資料、支援範囲、追加費用の条件研修担当・業務責任者

AI研修の依頼仕様シートをダウンロード(CSV)

依頼内容を整理する雛形です。自社の条件を書き込み、研修会社との打ち合わせに使えます。

提案は、演習・確認方法・支援範囲で比較する

同じ「実践型研修」でも、講師の実演を見る形式と、受講者が操作してレビューを受ける形式では内容が異なります。提案書では、受講者が何を行い、講師がどこで確認するのかを見てください。

事前準備に必要な日程と自社の作業量も確認します。教材確認やアカウント準備を誰がいつまでに行うかが曖昧な提案は、その点をそろえてから比較してください。

料金に含まれる教材作成、質問対応、受講後の資料利用やフォローも比較します。研修直後に確認する技能と、職場で試して確かめる業務の変化を分け、後者は誰が受け持つかを決めます。業務への当てはめや手順の変更まで必要なら、AI活用の定着・改善支援も含めて依頼範囲を確認します。

仕様表をもとに、研修内容を相談する

アクセルAIのAI活用研修を検討する際も、対象者と業務、現在の経験、使える環境からお伝えください。支援の進め方と支援者の背景も確認できます。

受講後に社内の相談役を育てる場合はAI推進者の役割と育成へ。すでに導入・研修を終えて停滞している場合は、AIが定着しないときの確認事項をご覧ください。