AIを契約し、基礎研修も終えたのに、使う人が一部に偏っている。そんなときは、まず「誰が、どの仕事の、どこで止まっているか」を確かめます。操作が分からない場合と、資料へのアクセス権がない場合では、必要な支援が違うからです。
この記事では、未利用の理由を研修・業務適用・環境整備・推進者育成へ結びつけ、何をもって改善と判断するかを整理します。追加研修を依頼する前にも、導入済みAIの立て直しにも使えます。
使わない理由から、依頼する支援を選ぶ
利用ログだけでは、使わなかった理由は分かりません。現場の担当者に、直近で使おうとした仕事、そのとき困ったこと、結局どう処理したかを聞いてください。使う機会がなかった人と、試したが途中で諦めた人を分けて考えます。
次の表は、支援の依頼範囲を決めるための整理です。複数に当てはまる場合は、同じ業務の中でどの問題が先に作業を止めているかを確認します。
表は横にスクロールして確認できます。
| 未利用・停滞の理由 | 確かめること | 必要な支援 | 顧客側の担当 | 評価指標の例 |
|---|---|---|---|---|
| 操作や指示の出し方が分からない | 実務に近い題材のどこで止まるか。経験による違いはあるか | 職種・習熟度に合わせたAI活用研修 | 研修担当と受講部門の責任者 | 演習で完了できた作業、実務で試せた作業 |
| 操作はできるが仕事に使えない | 対象業務、入力資料、完成条件を決められるか | 業務の選定、試行、手順化を行う実務適用支援 | 業務責任者と実際の作業担当者 | 完了までの総時間、修正・差し戻し |
| 権限・接続・利用ルールで止まる | 必要な機能や資料を使えるか。利用可否を誰に確認するか | 実行基盤・運用環境の整備 | 情報システム担当と資料・業務の管理者 | アクセス不能や転記の発生、相談の解決状況 |
| 詳しい人に相談が集中する | 各部門の相談先、活動時間、引き継ぎ方法が決まっているか | 推進者育成と共有・相談の仕組みづくり | 推進事務局と部門責任者 | 相談の滞留、他の社員による手順の再利用 |
| 確認・修正が重く、使い続けられない | 誤りの種類、参照資料、完成条件、確認時間 | 出力と手順を見直す実務適用・定着支援 | 業務責任者と成果物の確認者 | 確認込みの総工数、誤り、差し戻し |
| 利用はあるが成果を説明できない | 比較する業務・期間・件数・品質基準が決まっているか | 測定と振り返りを設計する定着・改善支援 | DX推進担当と業務責任者 | 業務時間と品質の変化、継続・見直し判断 |
操作で止まる人には演習が必要です。一方、資料を使えない人には、権限や利用手順の確認が先になります。依頼時は「研修を実施する」だけで終えず、対象業務、残す手順書や記録、顧客側で判断する人まで決めます。
公開事例でも、教育と環境・推進体制を組み合わせている
NRIの「IT活用実態調査2025」では、生成AIの課題としてリテラシー・スキル不足やリスク管理の難しさが挙げられています。国内の売上高上位企業へ依頼し、CIO等から517社の回答を得た調査で、課題設問の有効回答は340社です。大企業の管理者側の認識であり、個々の社員の能力や研修効果を測った結果ではありません。NRI、2025年11月25日
KDLが掲載するミズノの事例では、研修とアイデアソン後に利用人数・チャット数が増えた一方、経験者には基礎講義が長く感じられたという声も紹介されています。担当者は、レベル別の教育や継続的な働きかけ、教育の内製化を今後の課題に挙げています。支援会社に掲載された顧客の声で、公表日は本文に記載されていません。業務時間や品質の改善まで検証した資料ではない点にも留意が必要です。KDL掲載のミズノ事例
NTTPC自身の記録では、既存アプリとの連携、各部署の推進担当者、研修、共有会・コミュニティ、個別相談を組み合わせています。各部署に技術に詳しい社員がいた企業の事例であり、研修単独の効果とは切り分けられません。自社で参考にする際は、相談を受ける人や活動時間を確保できるかまで確認します。NTTPC、2026年3月25日公開・4月21日更新
いずれも第三者の取り組みです。自社に当てはめる際は、業務や受講者、使える環境の違いを踏まえて支援を選びます。
満足度、利用の広がり、業務成果を分けて測る
研修満足度は、内容や進め方を改善する材料です。利用者数は、活用の広がりを知る材料です。仕事が改善したかは、対象業務の完了時間や品質を別に確かめます。
- 利用の広がり:対象者、観測期間、何を利用と数えるかを決めます。対象業務を担当しなかった人まで未利用と評価しないようにします。
- 業務の時間:資料の準備、AIによる生成、人による確認、修正まで記録します。初稿だけが速くなっても、確認を含む総時間が増えていないかを見ます。
- 成果物の品質:誤り、抜け、差し戻しなど、その業務で困ることを決めます。作成者と確認者の両方から記録を集めます。
比較する業務の種類、件数、難しさ、担当者、期間も残してください。繁忙期や人員変更、別の業務改善が重なった場合は、その条件も併記します。自己申告と実測を区別し、削減時間をそのまま人件費削減や売上増加に置き換えないことが大切です。
測定前に業務責任者と、どの状態なら継続・拡大し、どの問題が残れば手順を見直すかを決めます。基準は業務ごとに置き、利用回数だけで結論を出さないようにします。
業務・対象者・期間、準備/生成/確認/修正の時間、品質、比較条件、判断を記録する空欄のシートです。実績値は含みません。
仮想例:問い合わせ回答の下書きを実務へつなぐ
以下は、架空の営業部門で支援の進め方を説明する例です。
基礎研修後、担当者はAIを操作できるものの、問い合わせ対応では使っていません。確認すると、回答に使ってよい資料と、出力を確認する人が決まっていませんでした。
まず業務責任者と、製品仕様に関する問い合わせの下書きを対象にします。参照する最新版の資料、回答に必要な項目、原文と照合する箇所を決め、利用可能な過去の問い合わせで試します。価格の確約など担当者の判断が必要な内容は、下書きと区別して扱います。
操作で止まる担当者には演習を追加し、資料へアクセスできなければ権限を確認します。実務で試した記録から、下書きの作成だけでなく確認・修正の時間と誤りの種類を振り返ります。その結果を踏まえて、対象を広げるか、資料や手順を直すかを業務責任者が判断します。
相談前に、止まっている仕事を一つ持ち寄る
相談には、利用中のツール、止まっている業務、使わなかった理由、確認できている数字を持ち寄ってください。まだ測定できていなければ、その状態から確認項目を整理します。
操作・演習の課題はAI活用研修、教える人や内製する人の不足はAI推進者育成・内製化支援、権限や接続の課題はAI実行基盤の整備が検討先です。業務への当てはめから振り返りまでを相談したい場合は、AI活用の定着・改善支援で依頼範囲を確認できます。

